私には帰る場所がある

2泊3日で上京してきた。8月で母のことがひと段落したのと、私がライターをしているリタリコでライター向けのイベントがあったのとで。駆け落ち以降、初めて何ごともない落ち着いた状態での上京で、ゆったりと楽しめてしみじみとよかった。

1日め

飛行機を降りたその足で、秋葉原で中高時代の親友とランチ。あえてサイゼリヤで、小エビのサラダとか食べながら2時間ぐらい喋り倒す。

昔から本当にこの人が大好きで、好きな理由を何度も自分で分析しているのだけど、たぶん私は彼女の優しさと陽気さ、豊かな言語センスが好きなのだ。あと、これはあんまり重要じゃないけど、しかも美人。

箸が転がっても可笑しい年頃、と言うけれど、その頃に戻ったかのようにおなかを抱えて笑いながら、それはそれはよく喋った。共通のくだらない思い出が多く、あんなことあったこんなことあったと話しては笑ったが、合間に「◯◯ちゃんが結婚してどこどこに住んでて」とかいう、特にぜんぜん親しくもない同学年の子の話が出てきては、名前を聞いただけでなんだか嬉しくて「あーーあの子!!」と叫ぶ、みたいなことも頻発した。なぜ人というのは、過去の同じエピソード記憶を探り当てただけでこんなにも嬉しいのかねえ。

話の内容が、過去から、瞬時に「仕事が、旦那が、子どもが、教育が、寄る年波が…」みたいな現在にワープする。縦横無尽に時空を移動しながら、今ここで、かつて少女時代を共にした彼女と膝をつきあわせているということが本当に不思議で、幸せだった。

15時頃にホテルにチェックインし、全力で数時間眠る。夜にも予定を詰め込んでいたからだ。お流れになったけど。

お流れになった夜の予定とは、マブダチのくらげくん夫妻との顔合わせ(10年近くのスパンの親友なのにリアルで会ったことはないのだ)。スタートが20時ぐらいになるとのことだったのだが、私は夜20時といえば「電池が切れる」し、妻のあおちゃんの体調が悪いとのことで、次の機会にということになり。とりあえず皆(くらげくん聴覚障害あり、私とあおちゃん聴覚過敏あり)にとって過ごしやすい静かな店ということで、ルノアールに行くはずだった。ルノアール、タバコ臭いけどね。

夜がフリーになったので、私にとって懐かしい街である北千住(の駅ビル)を堪能する。マルイ前のコンコース、「北千住駅」の字の部分に相変わらず鳩が留まったりしており、いとをかし。

服屋や雑貨屋をひととおりザッピングし、本屋で自分のデビュー作が載っている本を探し、早々にベトナム料理店で夕食を済ませる。最近都内ではベトナム料理やが増えているようだが、おそらく出稼ぎのベトナム人が増えていることと関係があるだろう。

フォーと春雨サラダ、揚げパンとココナツミルクぜんざいのセット。タイに1年住んでいたことがあるため、フォーはちょっと馴染みのある味と違うなという感じだったが(たぶんタイのほうが味がこってり)、揚げパンとぜんざいの組み合わせは最高だった。ココナツミルクだいすきぃ。都内は食の選択肢が広いのもありがたい。私がいま住んでいる地方都市では、エスニック料理やがあるとしたらインドカレー屋ぐらいだ。

ホテルに戻る。複数の路線が乗り入れるターミナル駅のコンコースは人で溢れており、その賑やかさにほっとする。同時に、人口が減るいっぽうの地方都市の駅前の様子を見慣れつつあるからか、心の中で「今夜は大きな祭りか何かですか?」とつぶやいてしまう。

想像以上に冷たい風が吹いており、上着が欲しかった。そのへんの駅ビルに入っている店で手頃に変える上着がないかちょこちょこググッたりしたあと、持参した入浴剤を入れたお風呂に浸かり、21時すぎに就寝。冷えた身体にお風呂の温かさが心地よかった。

2日め

8時前までぐっすり寝て起床、朝ドラを見てから、どすっぴんの適当なかっこうで朝食バイキングを食べにいく。シリアルと牛乳を用意しておいてほしい… このホテルはつい最近オープンしたもので、全館禁煙だし駅近で便利なのだが、アメニティとか食事とか、微妙に気の利かない感じのところがある。

身支度して、卒業以来初めて連絡をとった、大学の社会学の恩師に会いにいく。ランチの予定だったので、午前中に四ツ谷に寄ってカトリック系のもろもろを見てこようと思っていたが、体力温存のために無理しないでおく。代わりに服屋で試着してみて着心地に惚れた秋向けの上着を買い(店舗まで行ける環境はなんでも試着できるので本当にいい)、また、あえて少し遠回りして、ひさびさに高田馬場から母校のキャンパスまで「馬場歩き」などしてみんとす。

在学当時から長めに考えると20年近くたっていることもあり、街はかなり様変わりしていた。そして、高田馬場から文学部キャンパスまでは想像の2,3倍の距離があった。ゆっくりめに歩いて25分ぐらいかかったように思う。アラフォーマダムの身体にはきついし、1時間以上混んだ電車に乗ったダメ押しがこれなのであれば、在学当時の私にもそうとうきつかったはず。そりゃ、滅多に授業に来る気がしなかったのも、来たら来たで帰る気がしなかったのも当然だと思った。

穴八幡神社にお参りをする。神輿を仕舞っている蔵の前の階段で昼寝していて巫女さんに怒られたり、同じ階段に腰掛けているときに起きた甘酸っぱいエピソードなどがあったりしたなあ。懐かしい。

カフェテリアやら何やらゆっくり見てまわって時間をつぶす。カフェテリアのドアをくぐった瞬間、厨房から漂う匂いや音の響き方が懐かしさを誘い、在学当時のいろいろな感情がわーっと蘇ってくる。

キャンパスの植え込みは記憶よりも鬱蒼としていた。そりゃあ、10年20年経っていたらそのぶん樹々も伸びるよなあ。歳をとるわけだ。

先生の研究室をお訪ねする。先生は記憶の中よりも少しほっそりとされて、むしろお若くなられた印象だった。研究室で少しお話しながら、先生のブログに載せる写真に私の顔を出すかどうかを相談したりする(先生は、訪れてきた学生のポートレートを丁寧に撮っておられるのだ)。顔出しはとりあえずNGにさせていただき、さりげなく私のデビュー作の宣伝をしていただくようにお願いする。

私のデビュー作の掲載されている本はこちら。

[kattene]{“image”:”https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51xYYRnILgL._SL160_.jpg”,”title”:”発達障害の人の「私たちの就活」: 発達障害者の自立・就労を支援する本3″,”description”:”宮尾益知 (監修), 発達障害者の自立・就労を支援する会 (編集)”,”sites”:[ {“color”:”orange”,”url”:”//af.moshimo.com/af/c/click?a_id=1386379&p_id=170&pc_id=185&pl_id=4062&url=http://www.amazon.co.jp/dp/4309248764″,”label”:”Amazon”,
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私が宣伝を請け負うライターみたいだね、と先生がおっしゃって、ひとしきり笑う。

詳しくは、先生が私のことを書いてくださっているブログ記事で。先生は、淡々としているのにいつもどこかカタルシスのある写真つき日記をずっと続けておられる。「ライフコース」がご専門の先生にとっては、日々の生活を記録する日記がフィールドノートそのものなのだろう。私は、まだこの日記がブログ形式でない頃から、たまに思い出してはこっそり拝読していた。本になればいいのにと思うけれど、写真も関係者も多すぎて難しいのだろうな。(さりげなく宣伝返し)

9月12日(水) 曇り - フィールドノート 
https://blog.goo.ne.jp/ohkubo-takaji/e/9587b004c5671c00dbbbbed4a814486c

 

夜、父に高い懐石をおごってもらい、母や兄の近況の話などしながら、おなかが破裂しそうなほど食べる。父は終始嬉しそうにニコニコしており、元来のよく見ると可愛いタヌキ顔のコケティッシュさを全開にしていた。彼は若い頃数々の武道の有段者で、それはそれは屈強で身体の大きな人だったのだけど、ここしばらくは病気やダイエットでほぼ普通程度にサイズダウンした。

若い頃はただの大食らいの大雑把な体育会系、「食えればいい」という感じで、カレーとハヤシの違いもあやふやだった彼も、どんどん出世していくに従って舌も肥えていったらしい。「ここはいい仕事してるぜ。三ツ星レストランとか仕事のつきあいでたくさん行った俺が言うから間違いない」とかのたまう。三ツ星で思い出して、「あ、◯◯さん(世界的に有名なレストランのシェフ)最近亡くなったよね」と言うと、「ああ、◯◯な、知ってるよ、葬式に呼ばれたからな」と。どんだけエグゼクティブなんだあなた…

店の人に頼んでツーショットを撮ってもらう。ツーショットなんて駆け落ち前からも撮ってないのではないか。おそらく10年ぶりとかではないだろうか。顔を並べて見てみると、つくづくよく似ていると思う。父の眉は濃くて太い下がり眉なのだが、私も実は、ぜんぜん手入れをしていないとまったく同じ眉毛になるのだ。血というのはつくづく不思議なものだ。

地下鉄の駅の近くでギュッと握手。「がんばれよ!」と満面の笑みで、大きな声で言われる。私は「元気でね!」と返す。わけのわからない涙が少し出て、一人で照れ泣き笑いしながら駅の入り口に向かった。

本当は、会ったらテンション高く突進していって、勢いでハグしてやろうみたいなことを考えて会いにいったのだ。でも、本人を目の前にすると、独特の照れくささや遠慮があってできないものだ… オットとハグするのはあんなにも自然で簡単なのに、父に関しては力いっぱい握手するぐらいが精一杯。

ホテルのある駅に戻る地下鉄が地上に出たあと、向かいの電車と前後しながらしばらく並走した。闇の中に、これからそれぞれの家庭に帰るだろう人たちが吊り革につかまっている光景が、走馬灯のように明滅して流れ去っていく。

あれ、胸が痛くない。

昔は私は、世間の人の「家庭に帰っていく様子」が苦手だった。夕餉の匂いのする夕方の空気や、闇の中に見える家々の窓の光や、対向の電車の明かりなど。なぜって、変な発作みたいなものが起こるのだ。胸がギュッと締めつけられて、叫び出したいような気持ちになるのだ。

ずっと、胸がどこかおかしいんじゃないかと思っていたけれど、ここ数年で、これは心の痛みらしいと気づいた。たぶん私は、どこかで「私はきっと永遠に彼らの側には行けない、私には帰っていく家庭がない」と思っていて、それが胸に痛かったのだ。

でも、いまの私には帰っていく家庭がある。オットがいる、家も買った、子猫が来た、仕事もある。そして父とは、時間はかかったけど笑いあえる関係になった。母は落ち着くべきところに落ち着いた、兄についても幸せそうな近況を聞いた。私には帰るところがある。だから私の胸はきっと、もう痛くならない。

※3日めにはリタリコのライター向けイベントに出席し、帰路に向かったが、とりあえず力尽きたので記録は今後の機会に譲る。

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